国語・古典(山形県公立高校入試問題)
A ある人、寺へ参り、「長老様は。」といへば、「御留守ぢや。」と申す。「はるばる参りたるに御残りおほひ事ぢや。」とて、しばらくやすらひけるに、をりふし竹の子の時分ぢやとて、やぶ藪をのぞきまはれば、長老様、見事なる雁の毛をぬいて御座ある。B 此の人、そろりとそばへ寄り、御見舞ひに参りたるよし申せば、長老、1 仰天して、「さてさて此の鳥の毛を枕に入れ候へば、痛風の薬ぢやと申すほどに、かやうにいたすが、何としても2、手なれぬ事はならぬ物ぢや。」と仰せらるる。だんな聞きて、「其れは易ひ事で御座候ふ。是へ下されよ。」とて、くるくるとひきむしり、毛をばおしよせて、3「此の身はこなたにいらざる物よ。」とて、やがてとつて帰り、賞翫した。
〈『きのふはけふの物語』による〉
問一 部A「ある人」と部B「此の人」は同じ人をさしています。それはだれのことか、本文中から抜き出しなさい。
問二 部1で、「仰天」したのはなぜですか。その理由を述べたものとして最も適切なものを、次のア〜エの中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 突然、雁が藪の中から飛び立ったから。
イ 仮病を使っていたことを知られたから。
ウ 見られたくないところを見られたから。
エ 見知らぬ子どもに急に声を掛けられたから。
問三 部2「手なれぬ事はならぬ物ぢや」を現代語に直したとき、最も適切なものを、次のア〜エの中から一つ選び、記号で答えなさい。
ア 不慣れなことはうまくいかないものだ
イ やり慣れたことは失敗しやすいものだ
ウ 不慣れなことはつまらないものだ
エ やり慣れたことは容易なものだ
問四 部3に関連して、次の問いに答えなさい。
(1)「此の身はこなたにいらざる物よ。」と言った人は、どのような性格の人物と考えられますか。簡潔に書きなさい。
(2)このとき、「長老様」はどのような気持ちになったと考えられますか。二十字程度で書きなさい。