国語・古典(長野県公立高校入試問題)
次の文章は、「古今著聞集」の一段である。これを読んで、あとの各問いに答えなさい。
醍醐の大僧正実賢、もちをやきてア くひけるにイ、きはめたるねぶりの人にて、もちを持ちながら、ふたふたとねぶりけるに、まへに江次郎といふ恪勤者のありけるが、僧正のねぶりてうなづくを、われにこのもちくへと@ 気色あるぞと心得て、走りよりて手に持ちたるもちをA とりてくひてけり。僧正おどろきてのち、ここに持ちたりつるもちはとA たづねられければ、江次郎、そのもちは、はやくへと候ひつれば、たべ候ひぬとB こたへけり。僧正ウ、比興のことなりとて、諸人にB 語りてわらひけるとぞ。
(注) 醍醐=醍醐寺 きはめたるねぶりの人=たちどころに居眠りを始めてしまう人 ふたふたと=うとうとと
恪勤者=僧正の身辺の世話をする侍 気色ある=合図をしている おどろきて=目を覚まして 比興のこと=おもしろいこと
一 線ア、イを、現代仮名遣いに直して書きなさい。
二 線@「気色あるぞ」とあるが、江次郎は、僧正のどんな様子を、だれにどうしなさいという合図だと心得たのか。本文中の言葉を抜き出して、次の文中のa、bに書きなさい。
僧正の(a ) 様子を(b ) という合図と心得た。
三 線A「とりて」、B「語りて」は、それぞれだれがしたことか。本文中の言葉で書きなさい。
四 線A「たづねられければ」、B「こたへけり」とあるが、たずねた部分、こたえた部分の最初の五文字を、それぞれ本文中から抜き出して書きなさい。
五 線ウ「比興のこと」とあるが、何を「比興のこと」と思ったのか。次のア〜エから一つ選び、記号を書きなさい。
ア 僧正がもちのおいしさに驚いたこと イ 僧正がもちを焼く合図をしたこと
ウ 江次郎があわてて走ってきてもちを落としたこと エ 江次郎が勘違いしてもちを食べたこと