国語・古典(島根県公立高校入試問題)
次の文章を読んで、下の問一〜問五に答えなさい。
昔、弓をたしなむ人あり。一人夜道行く。ひめにし弓に矢を十筋@ とりそへていでけるが、また道にて小竹原に入りて、篠を一本切り、矢のたけにくらべ、根をそぎ、筈をつけて、十筋の矢にとりそへて持ちけり。
さて行くに、道の真中に、その色黒きものあり。人よりはちいさふして、さらに動かず。「のけ」と言へど、いらへず。A「いかさまに、狐むじななるべし」と思ひ、矢を放ちて射るに、手ごたへして、当たると見しもB、飛びのく音、かねなど射るがごとし。しかれども、やをらはたらきもせず。また射るも始めのごとし。一筋一筋と射るほどに、( )筋みな射て、ただ一本残れり。この時、かのもの動きて、上にかづきし物をわきへのけて、飛びかかるを、残る一筋にて射止めたり。さて、間近く見れば、たぬきにて、上にかづきしは鍋なり。恐ろしきたくみにあらずや。また、十は数の常にして、物事にこれを用ゆ。切りそへて十一にして行きしは心にくく侍る。Cこれ弓法の徳なりと言へり。
(『御伽物語』による)
問一 傍線部@の「とりそへて」を現代仮名づかいに改めなさい。
問二 傍線部Aで「いかさまに、狐むじななるべし」と考えているが、結局その正体は何だったのか。文章中の言葉で答えなさい。
問三 傍線部Bに「飛びのく音、かねなど射るがごとし。」とあるが、「かねなど射る」ような音がしたのはなぜか。その理由を十五字程度で書きなさい。
問四 ( )に適当な漢数字を入れなさい。
問五 傍線部Cに「これ弓法の徳なり」とあるが、どういうことを「弓法の徳」と言っているのか。最も適当なものを、次のア〜エの中から選び、記号で答えなさい。
ア 相手の正体が分からなくても恐れずに戦うこと。
イ 日ごろ練習を繰り返して技をみがいておくこと。
ウ 常に心を配って万一のための備えをしておくこと。
エ どんな時でも状況をよく見て冷静に行動すること。