解答と解説
(一) こえ (二) (例)水の音がたいそう近く聞こえるのは (三) 2
(四) 山のはを離れて雲もなき中空にさし上れ(ば、)
<現代語訳>
水の音がたいへん近くに聞こえるのは谷川が近くに流れているからだろう。夜が深まるにつれて聞くと、水鶏ともわからない鳥が、大変細い声で枕もと近くで鳴くのだ。何であったのでしょうか。21日の月は、山の端を離れて雲もない空のなかほどに上ると、明日の夜の月までも思いをはせた。麦の秋という季節まさにその頃は麦を刈り終えて稲の刈り場に似ていますので、そう言うようだ。それだけではありません。風の心、雲の行き来、月の光についても、わたしの気持ちのもちかたで必ずしも夏とは思えない。もともと大変寒い国であるので、このようにして見るのでさえ、陰暦八月ごろの夜の様である。
(一) ゑ→え ワ行の仮名「ゐ、ゑ、を」は、現代仮名遣いではア行の「い、え、お」となる。
(二) 「水の音のいと近きは」を現代語訳する。「水の音の」の「の」は、「が」におきかえられる、主語を表す格助詞の「の」である。「いと」は、「たいへん」。
(三) 麦を刈り終えたあとの様子が稲を刈ったあとに似ているので、その頃を麦の秋というようだが、それだけではないというのである。夏であるにもかかわらず、秋のように感じることの例が他にもあるということである。現代の季節と古典での季節とは暦の違いによって異なるので注意する。陰暦の1〜3月が春、4〜6月が夏、7〜9月が秋、10〜12月が冬となる。各月の異名と共に古典常識の一つとして覚えておくこと。
(四) この夜の月は、「二十日余り一日の月」と表されている。