国語・古典(熊本県公立高校入試問題)
次の文章を読んで、あとの問いに答えなさい。
烏、鵜に言ふ、「御身は( @ )者かな。水の上に身を浮かべて憩(いこ)ひながら、腹の下なる魚を安々と取りて食したまふ。我らは終日飛びあるきても食にAあふことわづかなり。たまたま干したる魚を見つけても、みな主ありて、守り厳しければ、取ること難し。B飽き満ちたまふ食を少しこなた此方へも施したまへ。」と。鵜答ふ、C「さな思ひたまひそ。上より見たまふには、何の苦もなく食を得はべると思ひたまふべけれど、水の中にて足を働かすこと少しもひまなし。その苦労大方のことにあらず。その上、魚も生あるものなれば、心安く取ること難く、終日食なきことあり。御身に与ふべき余計などはべらず。」と。 D人の世の有様になぞらへて思ふべし。
(西川如見著「町人嚢」による。)
(注)鵜=水鳥の一種。 御身=あなた。
1 ( @ )の部分に入れるのに最も適当なものを次のア〜オから選び、記号で答えよ。
ア 勇敢なる イ 未熟なる ウ 幸運なる エ 乱暴なる オ 誠実なる
2 傍線Aの部分「あふことわづかなり」を現代かなづかいになおして、ひらがなで書け。
3 傍線Bの部分「飽き満ちたまふ食を少し此方(こなた)へも施したまへ」に対する答えとなっている一文を文章中から抜き出し、その初めの五文字で答えよ。
4 傍線Cの部分「さな思ひたまひそ」の口語訳として、最も適当なものを次のア〜オから選び、記号で答えよ。
ア そう思っております イ そう思いなさるな ウ そう思ってください
エ そう思いたいのです オ そう思いませんか
5 傍線Dの部分に「人の世の有様になぞらへて思ふべし」とあるが、筆者は「烏」に、人のどんな一面を見ているのか。最も適当なものを次のア〜オから選び、記号で答えよ。
ア 他人が陰で苦労していることなど知らないで、自分のことを嘆きがちな面
イ 自分ではまったく努力をすることなく、安易に他人に助けを求めがちな面
ウ 他人の忠告には耳もかさないで、自分の個人的な幸せだけを願いがちな面
エ 世の中の人々の善意によって、自分が生かされていることを忘れがちな面
オ 他人の身の上をうらやむあまりに、自分の存在を無意味だと思いがちな面